研究課題
当該年度は、カナダについて文献・資料およびインターネットによる情報収集と現地調査を実施し、本研究プロジェクトの調査対象5ヵ国の調査を完了した。カナダは、オーストラリア、ニュージーランドと同様、伝統的な移民国家であり、現在も高水準の移民受け入れを継続している一方、先住民族が社会経済的最下層を形成している状況の改善に困難を抱えている。多文化主義を国策として採用してきた点では、フランスを除く他の3ヵ国と共通する。州ごとの立法・行政機構に高い独立性が備わることから温度差はあるものの、全体的に先住民族女性、移民女性の社会的・経済的状況の調査・把握は比較的進んでおり、その改善に向けた施策が実施されてきた。それらの女性と周囲の支援者による社会運動、政策提言活動が、法・行政制度の構築と運用に一定の影響を及ぼすとともに、公的サービスの不足の部分を補ってきた。調査した5ヵ国における、マイノリティ女性に関する制度や措置には複数の共通性と特殊性が内在しており、その効果や影響の比較は容易ではない。マイノリティ女性に一定の恩恵を及ぼす制度や措置が政策的に策定・実施されている場合も、多くは、複合差別が意識化されているとは言い難いことが、関連する政府機関、地方自治体などへの訪問、聞き取り調査から明らかになった。他方、当事者、NGO、それらに近い立場の研究者の場合は、必ずしも「複合差別」という言葉を使用していなくとも、それに近い問題意識を明確に持ち、現状分析と活動に生かしている印象を受けた。また、制度や措置の実施の態様は複数の要因、とりわけ当該国の政府と国民のマジョリティの志向する社会像とそれに基づく移民政策、先住民族政策、女性政策、人権政策などによって大きく左右されることも一層明確になった。マイノリティ女性が不可視化され、多くの制度や措置の枠外に放置された状態にある日本にとって学ぶところは大きい。なお、次頁には未記入であるが、研究実績の一部(査読付き論文)はジェンダー法学会の学会誌(2011年7月発行)に掲載されることが決まっている。
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立命館法学(立命館大学法学会)「大平祐一・徐勝・中島茂樹・松井芳郎・水口憲人享受退職記念論文集」
巻: 第333・334号 ページ: 1527-1548
国際人権(国際人権法学会)
巻: 第21号 ページ: 56-61
女性・戦争・人権(女性・戦争・人権学会)
巻: 第10号 ページ: 7-20