2005年フランス患者権利・終末期法は、生命終期か否かに拘わらず意思表明が不可能な場合について、自己決定・同意能力と無能力の谷間に位置する問題として取組んだ点が重要である。自己決定すべき時に自己決定できるか否かで、治療拒否・中止の手続を別異にし、末期で意思表明が不可能な場合について、患者のdirectives anticipees及び複数医師による協議決定手続(これに重点)の二制度を並立させたのが条文上の到達点であった。しかし立法姿勢としては、02年法で打立てた通常医療の原則を末期医療のどこまで妥当させることが可能かに挑んだ点にこそ、一つの比較法的示唆があるといわねばならない。
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