研究初年度の目的は、研究代表者がこれまで積み上げてきたオーストリア現代政治についての研究実績を基礎にしつつ、(1)2000年に政権参加を果たした「極右政党」がそれに伴う内部対立をいかに克服したのか、(2)右派国民政党が「極右」政党からの圧力を利用しながら、既存の利益構造の見直しにどのように着手・成功させたのか、という2点について、他国(イタリア・オランダ)との比較を念頭に置きながら明らかにすることであった。 第一の課題については、2000年の政権参加以降、自由党がその凝集性の維持と内部対立の克服を常にその最大のテーマとしてきたこと、また同党の内部抗争と分裂が、右派連合政権の崩壊と総選挙につながったプロセスを明らかにし、その成果は比較政治学会での報告という形で公表済みである。本研究を通じて、「極右政党」の政権参加と社会保障制度改革にとって、極右政党内部の対立の克服が重要な要因になっていたことが実証されたといえよう。第二の課題については、福祉制度改革の成否が、戦後制度を支える利益構造からの離脱の方向性と程度に依存し、かつ、その方向性と程度が、党内対立に傾きがちな極右政党との連合継続という「政権戦略」との一致に左右される、という仮説へと翻訳し、研究を実施した。次年度にその成果を取りまとめる予定である。 オーストリアを事例として第一と第二の課題の分析に取り組み、そこで得られた成果と仮説を、イタリア・オランダに適用する比較分析は、手についたばかりである。
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