研究課題
2年目の2009年度においては、ドイツ政治の対内的・対外的な政治変容について包括的な研究が進められた。1.まず昨年来の研究から連続する具体的な成果としては、安井宏樹氏による一連の業績がある。安井氏は、一方では、ドイツの政党政治において頻繁に見られ、今後の日本においても非常に重要な問題となるであろう分割政府の問題を、他方では福祉国家の再編の時代における政党と労働組合の対応を緻密に分析している。2.これに加え、2009年9月のドイツ総選挙による政権交代とそれに起因する国内政治の変容の分析について、協力研究者である佐藤俊輔氏により情報収集が行われ、その成果は近日University of Tokyo Journal of Law and Politicsに掲載すべく研究・執筆が継続されている。3.外交政策においては「統一後ドイツ外交のヨーロッパ化」という観点から、理論的枠組みの構築が進められた。これまでに構築された仮説は次の通りである。ドイツは統一することで長期的に強大化する潜在力を獲得し、ロシアや東欧も含めた他のヨーロッパ諸国の警戒心を極力惹起せずに、国際場裏で繁栄の基礎を拡大していくことが対外戦略上の中心課題となった。このため自国に対する周辺国の不信感を除去すべく、ドイツは歴史問題を克服しようとするのみならず、国際的・地域的な制度や枠組みに自国を拘束し、パワーの行使方法に関する予測可能性を向上させ、国際的信頼を高めようとしている。平成22年度は、独米・独欧関係とドイツ国内政治の相互作用を検討する予定である。
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University of Tokyo Journal of Law and Politics Vol.7
ページ: 1-28
新川敏光・篠田徹(編),『労働と福祉国家の可能性:労働運動再生の国際比較』,ミネルヴァ書房
ページ: 178-196
日本政治学会(編)『年報政治学:民主政治と政党制度』 60
ページ: 303-321