本研究は、香川県における民主党議員・候補者の行動をミクロレベルで観察することを通じて、小選挙区比例代表並立制下での政党組織(党中央-議員・地方組織-有権者)のあり方を明らかにすることを目指している。本年度は、1地方政党組織の分析と、2選挙キャンペーンの研究を行った。 1 香川県の民主党地方組織の組織的特質を分析したところ、それは国会議員・候補者の後援組織としての性格が極めて強く、恒常的で多様な資金源を確保できていないなど、「弱い制度化」に留まることが明らかになった。その背景には、香川県の民主党が元自民党代議士や市民運動家といった多様なアクターから結成されたという経緯があり、バネビアンコの「発生期モデル」に依拠するならば、「地域拡散型」と位置づけられる。 2 2009年9月に実施された衆院選に、香川県内の選挙区から立候補した二名の民主党候補の選挙キャンペーンについてフィールド・ワークを実施した。その結果、本研究が対象とした二名候補者は、ともに候補者を中心とする集票システムを構築していた点で共通していたことが分かった。他方で、キャンペーン手法や有権者に対するメッセージに注目すると、それらは(両者の属性や政治的資源が類似しているにも拘わらず)各々の選挙区に適合的なものとなっていたことが明らかになった。これは、「政権選択選挙」と呼ばれた2009年衆院選においても、選挙区レベルでは異なるコンテクストが存在していたことを意味し、将来的に民主党の凝集性が十分に高まらない可能性があることを示唆する。 これに加え、全民主党議員に対して、主に選挙キャンペーンに関する手法や他アクター(地方レベルの政治家や団体等)との関係、政策形成に関する意識などを尋ねたアンケート調査を実施した。今後、アンケートの回答結果の分析を行い、これまで取り組んできた事例研究から得られた知見の一般化を図っていく予定である。
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