本研究は、民主党議員・候補者の選挙や政策形成過程における行動を、主に香川県を事例としてミクロレベルで観察することを通じて、小選挙区比例代表並立制下での政党組織(党中央-議員・地方組織-有権者)のあり方を明らかにすることを目指している。本年度は、(1)2010年参院選における選挙キャンペーンの分析と、(2)昨年度から本年度にかけて民主党議員を対象に実施したアンケート調査の分析を行った。 (1)2010年参院選において民主党が社民党とともに推薦した候補者の選挙キャンペーンを、自民党候補の選挙キャンペーンと比較しながら分析を行った。自民党は公募での候補者選定を行うなど、地方政党組織主導の選挙キャンペーンが行われていたのに対し、民主党は社民党との関係から候補者擁立が難航し、社民党が連立政権から離脱したこともあって、効果的な運動が展開できなかった。また、政権交代後、これまで自民党を支持してきた団体と自民党との関係は弱まりつつあるようだが、民主党との関係が強化されたわけでもない、いわば様子見の状態にあることが分かった。 (2)選挙キャンペーンに関する手法や他アクター(地方レベルの政治家や団体等)との関係、政策形成に関する意識などを尋ねたアンケート調査を実施した。回収率は約10%と低い水準に留まったため、民主党議員の一般的な傾向を見出すことは難しいが、民主党や自らの支持者よりいわゆる無党派層からの支持が重要であると認識されていること、その一方で選挙運動を展開するための資源は自らが集めているという実態が分かった。また、基本的にはマニフェストに対して忠実であるべきとの考え方を持つ議員が多いことも明らかになった。事例研究を主とする本研究を一般化する上で、また民主党の統治システムへと分析を進めていく上で、貴重なデータを得ることができた。
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