本研究は、民主党議員・候補者の選挙や政策形成過程における行動を、主に香川県を事例としてミクロレベルで観察することを通じて、小選挙区比例代表並立制の下での政党組織(党中央-議員・地方組織-有権者)のあり方を明らかにすることを目指している。 本年度は、これまで行ってきた民主党香川県連を事例とした政党地方組織に関する研究の成果を論文にまとめ、上神・堤編著(2011)の1章として公表した。民主党の地方組織は地域によって異なる経過を辿りながら形成されてきたこともあり、本研究ではパーネビアンコの発生期モデルを援用しながら、民主党香川県連の制度化の水準と、その背景について分析を行った。ここからは、香川県では(多くの民主党地方組織の母体となった)社民党地方組織が民主党へと移行せず、元衆院議員の後援会を中心に形成されてきたことを背景として、国会議員・候補者の後援組織の連合体という性格を色濃く持ち、制度化が進展しなかったことが明らかになった。 これに加え、民主党議員の政策形成過程への関与について調査・研究を行った。まず、香川県内の選挙区から選出された国会議員に対して、各議員が経験した役職等に応じたインタビュー調査を行った。ここからは、政務三役主導という意味での「政治主導」が後退する一方で、政策調査会をはじめとした党側の役割が、手続き的、質的にも増大しつつあること、参議院会派の自律性が比較的高いことなどを窺い知ることができた。限られた調査ではあるが、執行部-議員関係から見た場合、政策形成の場面においても個々の議員の役割、自律性は比較的高いことが示されたと考えられる。これに加えて、森が政策決定に関する専門家の関与について、また、堤が民主党の提示した政策形成モデルと有権者の党派性について分析を行い、成果を論文として公表した。
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