研究概要 |
ネパール平和省(平和復興省)とその平和構築事業について調査分析した。 ネパールは,1996年2月勃発のマオイスト人民戦争が全国に拡大,21世紀に入ると国家破綻の瀬戸際まで追い詰められたが,2006年11月,国連の仲介のもとでようやく停戦が実現し,「包括和平協定」が締結された。 これを受け,2007年4月,ネパール政府が「協定」に基づき人民戦争を名実ともに終結させ,永続的平和を実現するために設立したのが,平和省である。 平和省は,平和大臣の管轄で,職員は約80名。主要業務は,(1)マオイスト人民解放軍(PLA)戦闘員の資格審査と宿営所収容,(2)停戦監視,(3)武器管理,地雷処理,(4)PLA宿営所の管理・運営,(5)国内避難民の復帰支援,(6)警察再建,(7)社会インフラ再建,(8)市民(人権・民主主義)教育,(9)選挙支援,(10)新憲法制定支援,(11)行政・司法改革支援,などである。広範多岐にわたる平和構築事業だが,財政的には,それらは「ネパール平和基金(NPTF)」「国連ネパール平和基金(UNPFN)」「国連平和構築基金(PBF)」の3基金により支えられている。 この研究では,平和省の設立・構成・運営と,その平和構築事業を分析し,評価した。その結果,国際社会の手厚い支援を受けつつも,少なくとも現在までは基本的にはネパール側主導で平和構築事業が展開されてきたこと,また,もしこの試みが成功するならば,それは途上国平和構築のモデルケースの一つとなりうることが,明らかになった。
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