今年度の研究では、昨今話題となっている「医療問題」の整理を行った。言い換えれば医療問題の分類学を指向したのだが、その結果、財政問題・偏在・医療事故の三点に関心が集中していること、しかしそれらは相互に(当然に)連関しているわけではなく、場合によってはある問題への対処は別の問題を深化させうることが理解できた。 また、関係する中央省庁(厚生労働省と総務省)のヒアリングを通じ、医療供給に関する専門情報が、制度設計においてどの程度影響を及ぼし、あるいは及ぼさないかがある程度理解できた。他方、公立病院改革に関しては、上述の問題点のうち、総務省が財政問題に関しては決定的な影響力を有しているが、それ以外の問題点を改善するにあたり、衷心となるようなアクターが存在していないことも明瞭となった。 他方、地方政府レベルでは、新しい制度装置である地方独立行政法人を選択肢として真剣に考慮することにより、政策医療機関の維持に関わる行政コストを下げようとする動きが顕在化しているが、主として筆者が在住する沖縄県の公立病院改革問題に関しては日常的な取材(特に県庁の医務課および県立病院局)を通じて、制度変更の政策決定過程における中心的アクターの「心象風景」を理解することに努めた。 総じて、予定していたある自治体から取材を拒絶されたことを除いては想定どおりに研究は進捗しており、また、論稿で研究の部分的発表を行った点については想定を越す進捗であった点は満足できるないようであったと自負している。
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