平成20年度は、調査科学省からの調査許可の取得、現地におけるフィールド調査地域の選定・予備調査を行った。2008年8月-9月、2009年2月-3月にジャカルタ、ボゴールと東カリマンタン州への訪問を行った。東カリマンタン州で東クタイ県ブサン郡の油ヤシ農園企業であるPT HPM (Hamparan Perkasa Mandiri)を事例として選定した。この企業と周辺の村々との関係について、NGO、同企業に隣接するLong Lees村、その上流に位置するMekar Baru村で聞き取りを行なった。 東カリマンタン州・県政府は企業からの地方税増の期待から、油ヤシ農園の拡大に積極的であり、中央政府は2006年以来、パーム油を原料としたバイオ燃料産業育成をすすめている。そのため東カリマンタン州の森林は急速に油ヤシ農園へと転換されている。事例として選んだPT HPMは2007年に操業を始めており、急速な拡大が地域に引き起こしている問題を検討するのに適している。とくに、現在表立った紛争がみられない地域で実際にどのような社会関係の変化が生じているか、そしてそれが地域社会・経済にどのような問題を引き起こす可能性があるのかを検討することができる。予備調査によると、調査地では、油ヤシ農園受け入れに関する意志決定は、地域のエリートに独占されていること、住民たちは油ヤシ農園が引き起こす環境破壊や土地問題に対する懸念が高いが、他の現金収入が低くかつ不安定なので、農園での雇用にも期待していることなどが明らかになっており、現地住民が油ヤシ農園の受け入れに対する態度をどのように形成していくかに関する有益なデータを取得することができた。
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