インドネシア側ボルネオ島タヤク農民の油ヤシ農園の受け入れに関する態度を調査するため、平成22年8月から9月にかけて約3週間にわたり、東カリマンタン州ブサン郡ロングレエス村において、インタビューおよび参与観察による現地調査を行った。ロングレエス村では、近隣の油ヤシ農園Hamparan Perkasa Mandiri(HPM)社と住民との関係にういて、農園企業、ブサン郡の郡長、アタン河一帯の慣習的長、油ヤシ農園の労務監督、小学校教師、所有する農地をHPM社に奪われてしまった場地農民に対して聞き取りを行なった。平成22年12月にジャカルタで調査ビザの更新を行った。平成23年3月に再びブサン郡を約一か月訪問した。この調査では、第一に、ロングレエス村での追跡調査を行った。半年ほどの間に、現地農民の農園に対する不信感が増大している様子が観察できた。また、第二に、ブサン郡でHPM社の操業に対して早い時期から反対を行なっているロング・ブントウク村を訪問し、村長、慣習的村長、長老たち、カトリック神父たちに対して聞きとりを行った。ここで、同村の油ヤシ農園拒否に関する意思決定のなかで、宗教的リーダー、および村長らリーダーの役割が大きいことを確認した。第三に、ブサン郡でもっとも上流のムカールバル村で聞きとりと参与観察を行い、自給自足的な米作に代わって、ココアやゴムなどの換金作物の植え付け面積が増加している状況を調査した。こうした土地利用の変化が、土地の経済的価値に対する住民の意識が高まる背景となっている。現地調査以外の時期は、調査で取得したテータの整理、分析を行った。以上の調査を通じて、油ヤシ農園を住民が拒否する理由として、情報の不足に起因する地域住民の農園企業に対する不信感、インドネシアの法体系における住民の土地権の脆弱性、現地における小規模換金作物の広がり、地域リーダーの主導的役割などを特定した。
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