フィンランドは、医療サービスの自治体間協力に長い歴史を持つ国である。一次医療は個々の自治体の責任であるが、自治体間組合によって医療サービスを実施しているケースが多い。二次医療については、全国を19地域に分割した法制定の専門医療組合が形成されている。この組合は現在進行中の地方制度改革の基礎単位となると予測されている。本研究は、1990年代の地方分権改革後、自治体間の協力(連合自治)が進展したフィンランドの医療制度と運用の実態を調査研究し、さらに、調査で得られた知見を、日本における自治体間協力による地域医療の再構築に資することを目的とする。そのためフィンランドにおける研究と並行して、わが国における地域医療、医療機関の連携についての北海道の先行研究文献を収集する。 本年度については、研究代表者は、フィンランドにおいて、二次医療をになう専門医療組合と一次医療組合に関する資料の収集に専念し、ヘルシンキ・首都圏地域の専門医療組合(HUS)理事および自治体協会の専門家から聞き取り調査を行った。それらの研究成果としては、フィンランド保健医療ケア制度のしくみとその整備の歴史、現在の状況と課題をまとめ、北海道地方自治研究(2009年3月号)に発表した。これはわが国で初めて、フィンランドの医療保健ケアの制度のしくみと現状を報告するものである。フィンランドでは自治体の責任である一次医療も二次医療も十分機能している。しかし不況時に医師の養成を抑制したことと高齢社会の進行による医師不足、ならびに医療ケアへのアクセスの格差が問題となりつつあることが明らかになった。 研究分担者は、フィンランドにおける研究代表者の調査に同行するとともに、研究分担者の主たる研究課題である北海道中空知地域の一次医療圏(奈井江町)と二次医療圏(砂川市)の医療連携に関して基礎的な資料の収集を行った。
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