研究概要 |
本研究課題は、先進国から途上国への政府開発援助(Official Development Aid,以下ODA)の政策過程を日本、イギリス、アメリカを中心に比較検討し、そこからより効果的なODA実施の方策を探ろうとするものである。当初は本人・代理人モデルを分析枠組みにする計画であったが、平成20年度の研究から、これよりも「政策ネットワーク枠組」(政策決定過程に関わる重要なアクターの組み合わせを類型化したもの)のほうが妥当であるとの見解に至った。政策ネットワーク枠組のもとでは、日本は官僚主導型、イギリスは政党主導型、アメリカは多元主義型と位置づけられ、現在、それぞれの類型は政策変化の速度及び政策内容に大きく影響を与えていることを実証的に示すことをめざした分析をおこなっている。 このような目的達成のため、平成20年度は主に、二次文献による枠組の検討、同じく二次文献による日・英・米の事例研究、そして、イギリスとフランスに出張しての一次文献資料収集をおこなった。これまでの分析から、以下の点を指摘できる。官僚主導型である日本のODA政策過程では、政策変化が乏しく、また援助資金の配分も省庁の利益を反映したものになりがちであること、政党主導型のイギリスの場合では、政権交代により政策が大きく変化し、また援助資金配分も政党の政策志向を反映すること、そして、多元主義型のアメリカの場合は、政策変化は多数のアクター(拒否権プレーヤー)の関与のために緩慢であり、資金配分は利益団体の意向を反映したものとなっている。今後、これらの論点をさらに実証的に示すための研究をおこなう必要がある。さらに、本研究での詳細な比較分析としては日・英・米を対象とするが、同時に、他の先進諸国の援助実施体制についても主に二次文献に基づいた分析をおこない、本研究で展開する議論が日・英・米以外の場合にも当てはまるかどうかをも検討する予定である。
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