研究概要 |
本研究課題は、先進国から途上国への政府開発援助(Official Development Aid,以下ODA)の政策過程を日本、イギリス、アメリカを中心に比較検討し、そこからより効果的な0DA実施の方策を探ろうとするものである。研究助成最終年度となる平成22年度は、分析枠組の再検討と日本の事例について主に分析した。分析枠組みとしては、「政策ネットワーク枠組」(政策決定過程に関わる重要なアクターの組み合わせを類型化したもの)を検討し、その妥当性を探った。この枠組のもとでは、日本は官僚主導型、イギリスは政党主導型、アメリカは多元主義型と位置づけられる。日本の事例分析に関し、平成22年9月に在外研究先のアメリカ合衆国カリフォルニア州より東京に一週間の出張をおこない、アジア経済研究所図書館等での資料収集及び聞き取り調査をおこなった。日本の政策過程に関しては、暫定的分析をアメリカ政治学会年次大会(ワシントンD.C.)において報告した。 これまでの分析では、アメリカは議会、大統領、市民団体およびシンクタンクが様々な段階で対外援助の政策決定に関与し、これらアクターの交渉のなかで政策イノベーションがおこっていること、イギリスの援助政策は政党主導であるため政権交代により援助政策が大きく変化する特徴をもつこと、さらに今年度の分析で日本の場合は政策決定において政治家が官僚の専門知識に頼り裁量を多く与えるため政策変化がおこりにくいとの分析結果を得た。今後この知見を雑誌論文及び単著としてまとめる予定である。
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