本年度の研究は、団体の権利主体としての位置づけが前近代と近代とでどのように変化し、またいかなる連続性が理論的に想定されたかという問題について、日本と西洋(主としてドイツ・オーストリアおよび英米)の公刊された著作と関連する雑誌論文などの収集、整理を中心におこなった。 国内では、研究対象となる主たる日本人法学者が在職した東京大学および京都大学および国立国会図書館などでの文献の調査および、日本でしばしば参照された西洋の法理論、特にドイツ法学における「団体」理論の体系化に多大な貢献をしたギールケの蔵書を有する一橋大学図書館ギールケ文庫での調査をおこなった。また勤務校での授業が休みになる9月と1月はじめを利用して、英国のブリティッシュ・ライブラリーおよびロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ図書館、ケンブリッジ大学図書館での西洋における法理論文献の調査をおこなった。 中間的な成果を、日本近世の宗教的団体の統合原理について9月にレッチェ(イタリア)で開催されたEuropean Association for Japanese Studiesで、また日本と西洋における権利主体としての団体という問題について、1月にオックスフォード大学(英国)で開催された自由主義哲学のシンポジウムで報告した。いずれも英語よる発表であり、後者は近日中にセント・アントニーズ・カレッジ(オックスフォード大学)からシンポジウム報告書として公刊予定である。
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