本年度の研究は、日本における「団体」の法的基礎付けが、社会規範の制度的な保障との関係でいかに理論化されるかについて、調査・考察をおこなった。具体的には、日本と西洋(主として英米仏)の公刊された著作と関連する雑誌論文などの収集・分析と、また関連学会での報告をおこなった。調査としては、国内では、研究対象となる主たる日本人法学者が在職した東京大学および京都大学および国立国会図書館などでの文献の調査および、日本でしばしば参照された西洋の法理論、特にドイツ法学における「団体」理論の体系化に多大な貢献をしたギールケの蔵書を有する一橋大学図書館ギールケ文庫での調査をおこなった。また勤務校での授業が休みになる9月を利用して、英国のブリティッシュ・ライブラリーおよびロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ図書館、ケンブリッジ大学図書館での西洋における法理論文献の調査をおこなった。中間的な成果発表として、明治憲法形成期の統治と倫理の関係について7月にシドニー(オーストラリア)で開催されたJapanese Studies Association of Australiaで、また関連テーマとして東アジアにおける慣習と法についての概念について、8月にテジョン(韓国)でInternational Convention for Asian Scholarsにおいて研究報告をした。いずれも英語による。後者の報告については2011年に「アジア」概念をテーマとした論文集として英語で出版予定である。
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