まず、日本の労働組合をめぐる国際関係史を分析する英文論文と単著を完成させ、最終的な出版にまでこぎつけた。これらは主として前年度までの科研費の成果であるが、今年度の科研費による研究の成果も、そのなかに盛り込まれている。とりわけ単著にて、グローバル市民社会の可能性に関する論点を提示することができたことは重要であった。 この科研費による直接的な研究成果のうち最大のものは、「自民党型政治の定着」と題する論文である。これは、自民党が結成時に議員政党から脱却して、近代的組織政党を建設しようとしていたこと、にもかかわらず小選挙区制の導入を先送りしたことでそれを果たせなかったことを実証的に明らかにしたものである。こうして定着した自民党型政治に対抗する形で市民政治が台頭するのであり、本研究の歴史的前提を固める作業として、極めて有意義であったと思われる。 そして、この論文の成果を踏まえて、以下の二つの作業を進めた。第1に、保守勢力のなかで、いかにして自民党型政治から脱却すべく、新自由主義と政治改革の潮流が発生してきたのか、という点についての分析である。第2に、社会党を中心として、いかにして動員主義的な組織政党から脱却して、市民参加型の民主主義を目指す動きが高まったのか、という点についての分析である。上記の二つの作業を行いながら、市民政治の分析を主軸とする戦後日本の民主主義に関する書籍の執筆を進めた。本科研費の交付を受けながら、来年度を目処に第一稿を完成させたいと考えている。
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