一九五五年体制以来、今日に至るまでの民主主義の変容と、そこにおける市民政治の役割を分析した本の執筆を進めた。これが本年度の中心的な作業であった。しかし、公刊するまでには至らず、その結果として、昨年度に比べて報告できる研究成果が少ない。だが、まとまった本の執筆にはどうしても膨大な時間がかかり、研究成果が表面的に少ないことについては、残念ながらやむを得ない。 ただ、重要な研究上のブレイクスルーがあった。とりわけ同時代史学会で行った報告「市民参加と市場競争のあいだ」は、本をまとめる上で空白となっていた部分を埋めるものとして、極めて重要であった。私は従来、1950年代から60年代の研究を中心に行ってきたが、ここ数年は、現状分析の研究を進めてきた。この報告によって、そのあいだの1970~80年代について、日本型多元主義の登場とそれに対する市民政治のインパクトというかたちで、大きな見取り図を得たことは、上述の本の執筆に大きな弾みをつけるものであった。それに続いて東京大学の政治史研究会でも、2011年1月22日に「日本型多元主義の歴史的位置」と題する発表を行い、様々な批判や助言を得ることができた。 また、小宮京氏の『自由民主党の誕生』の書評を選挙学会の機関誌に執筆した。同書は、政党組織を軸に据えた分析を行う点で、本研究の関心と大きく重なるものがあり、その精読を通じて、この研究の分析を深めることができたことは収穫であった。 研究期間の最終年度の2012年度を目標として、本研究の成果をまとめた単行本を公刊すべく、今後とも執筆作業を進めていきたい。
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