第一に、当時の雑誌・新聞記事や一次資料の収集、関係者へのインタビュー、それらの整理および分析を積極的に進めた。これについては、以下の論文の中で活用されている。 第二に、論文を二つ執筆した。まず一つは、「日本型多元主義の時代へ」という論文であり、同時代史学会の『同時代史研究』に掲載された。この研究を進めていく過程で、市民主義のインパクトが、社会党のみならず、政権党であった自民党まで及んでいることを発見した。具体的には、与野党伯仲という危機を背景として1977年に導入された総裁予備選挙がそれであり、一般党員の総裁選挙への参加を可能にするこの導入を契機として、1970年代末からの保守復調が導き出されたことを、論文の中で明らかにすることができた。 もう一つの論文は、「松下圭一と市民主義の成立」である。市民主義の成立を導いた理論的なリーダーは法政大学教授の松下であったが、1950年代後半以降の彼の著作を通じて、いかにして近代主義やマルクス主義から切り離された市民主義が理論的に成立したのかを分析した。あわせて市民主義の定義を示すという試みも行っている(『立教法学』第86号に掲載予定で入稿済み)。 第三に、単行本の執筆計画を進め、構想を練り上げるとともに、執筆に具体的に着手した。本の刊行までには様々な過程をへなければならず、形にするには時間がかかるが、上記の論文を土台として、書き溜めるという作業を徐々に行った。
|