本研究は政治集会における政治家と聴衆との関係に焦点を当てている。特に、話し手と聴衆との間にどのような相互作用が発生するか、聴衆の反応は、話し手の発表の内容や方法に即座にどういった影響を与えるかなどを検証し、明確にすることを目的とした。今年度は、過去2回の選挙期間中に録画された演説に加えて、ここ数ヶ月の間に各政治集会における自民党の派閥リーダーや選挙対策委員長、与野党の衆・参議員などの演説を録画し、テープおこしを行った後、聴衆が話し手の言葉に対する反応を区別した上で、欧米で行われた同様の研究に基づいて、基準となる修辞法の一覧表を作成した。この一覧は政治的コミュニケーションにおける政治家と有権者の間にある相互作用を理解するために重要な一つの分析基準となる。これを応用することによって日本における政治過程や政治的行動をも把握することができる。この一覧表には16ほどの項目がある。なかでも話し手が同じ言葉を繰り返す「リスト」という項目や話し手の政策や争点に対する立場を明確にする「立場の明確化」、あいづちや同意を求める「問いかけ」、自分の考え方や政策、行動、理念などを相手と比較する「対比」などの修辞法を作成した。この項目は欧米の研究と比べると異なっている。来年度にはこの一覧表を使用して総選挙でデータを集めた上で実証的な分析を試みる予定である。
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