本研究の目的は:1)社会科学のツールとしての世論調査について、認知科学的な視点からその問題点を再検討する。そして、2)そのことをつうじて、それがより信頼性の高いツールとして応用が可能となるように、具体的な提言をすることである。 より具体的には、「政治的信頼」に関する意識の測定方法について、Web調査を利用して、評価項目のランダマイゼーションの是非を検討している。 コンピュータを利用した意識調査で一般的となりつつあるランダマイゼーションにより、評価項目の順序によるバイヤスが排除されると考えられているが、一方で、そのことが、その質問の「reliability(信頼性)」を損ねていることが判明した。その対処法として、初年度には、最初に提示される評価項目を「本人の最高・最低評価項目に固定」する質問方法を提案し、それについてのデータを取得した。ところが、分析の結果、必ずしも当初想定したような改善が見られなかった。そこで、今年度は、「共通の最高・最低評価項目で固定」する評価方式を試みた(2009年9月調査)。また、最もシンプルな形として、ランダマイゼーションを全くしない場合の問題点を検討すべく、ランダマイゼーションのある場合とない場合のパネルweb調査を実施した(2010年2月調査)。現在、双方のデータの分析中である。
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