研究概要 |
昨年度に引き続きJournal of Peace Research誌のうち、本学未所蔵分の残りの半分を収集した。 また、昨年度行った文献研究によって明らかとなった必要文献の収集も行った。その結果、平和研究分野における基礎文献の収集はほぼ終えた。また安全保障研究分野文献に対する考察の結果、次年度において補完すべき資料のリストを作成した。また、本科研費による出張において関連研究分野の研究者と情報交換を行うことに加えて、学内研究助成金を利用して、研究成果報告を口頭で行った より具体的な研究成果について触れるならば、今年度の研究成果として、次の二人の所論につき、知見を深めることができた点が特に有益であった。第一に、Robert E.Goodinの議論である。グッディンについては日本においてもすでに政治理論研究者の間では少なからず知られるようになっているが、まだその議論は十分に紹介されていない。本研究との関連ではProtecting the Vulnerable(U Chicago Press,1985)を始めとする帰結主義的議論は、安全保障理論研究、平和理論研究、規範的政治理論研究の三分野の接合を試みる際、示唆に富むところが大である。 もう一人はOliver P.Richmondである。リッチモンドは国際関係論においてはすでに高名な研究者である。本研究にとってはPeace in Internatonal Relations(Routledge,2008)がとりわけ密接な関連をもっている。安全保障研究を中心にした国際関係論において平和概念がどのように論じられてきたのかに焦点をあてた同書は、本研究と問題設定を大幅に共有するところがある。 本研究が、当初、本年度に予定していたWorking Paperの発表を思いとどまったのは、同書を入手し、発表のためには同書の内容の詳細な検討が必要であると判断したためである。
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