平和および軍事力行使の適切性を対象とする主要な2つの研究領域である安全保障研究と平和研究について、その理論研究の最新の研究動向を広範に摂取・整理することによって、両研究領域においては近年、積極的な相互参照がなされ、前者においては安全保障概念の拡大・深化が、後者においては平和概念の文化的偏りが指摘されることで、対象領域や研究手法の接近が見られることが明らかになった。これに比べて、規範的政治論においては依然として正戦論が中心的な道具立てとされているが、そのなかでもリベラルな平和の概念を批判する前2者と同様の研究動向があることがわかった。以上によって、平和の政治理論を構築するための基礎理論についての研究を着実に遂行できた。
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