平成20年度は本研究の初年度に当たるため、予備段階の作業が主であった。研究代表者は2008年8月に全米政治学会(APSA)の研究大会で本研究にかかわる論文の収集や研究者との意見交換を通じ、本研究の意義についての認識を深めた。具体的には、それぞれ個別の紛争解決制度の政治経済学的研究は次第に行われるようになってきているものの、分野を横断して比較した研究はほとんど皆無であることが判明した。収集した論文をもとに文献のサーベイを行ったが未完成であり、したがって未刊行である。 実証面では、平成20年度は主に投資仲裁(紛争解決)の分野に集中する計画であった。この研究については、研究代表者と研究分担者は2009年3月にワシントンにある国際投資仲裁センター(ICSID)にて現地調査を行い、関係者からの事情聴取をするとともに、データの収集も行った。結果は簡単なメモとして残しているが未刊行である。ICSIDの投資仲裁はいわゆるtransnationalな紛争解決制度であり、かなり実効的に機能していることが判明したが、まだ未解決の課題があることもわかった。アルバイト学生を使って、ICSIDのデータのデータベース化を現在実行中である。 成果の発表に関しては、研究者代表者が前年度より行っている世界貿易機関(WTO)の紛争処理データの分析の成果は『国際政治』153号に発表した。また研究分担者のこれまでの理論研究の集大成がやはり『国際政治』155号の巻頭論文として公刊されている。また両名とも『日本の国際政治学』の理論編の巻でそれぞれの持論を展開した。
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