本研究の目的は世界に存在する様々な司法的あるいは準司法的紛争解決の制度を比較研究することにより、それらの制度が実効的に機能する要因を探るとともに、これまで国際関係論で構築されてきた法化理論を再検証し、それを再構築することを目的としている。 従来取り組んできた世界貿易機関(WTO)紛争解決制度についての研究では、2009年3月に東京大学で開催されたシンポジウムでハードローとソフトローの相対的役割の観点から分析した報告を行ったが、これを基にした論文が『ソフトロー研究』に掲載された。 平成21年度は前年度に引き続き、世界銀行における国際投資仲裁センター(ICSID)の研究にも取り組んだ。特に同センターのウェブサイトの情報およびICSID Reporterという刊行物からこれまで同センターで仲裁がされてきた案件のデータベース化を行った。またこのデータを分析した結果を2010年2月の米国国際研究学会(ISA)研究大会にて報告した。また同結果は翌月、京都大学の研究会においても報告した。いずれの機会でも活発な質疑応答が行われ有意義なフィードバックが得られた。 また平成21年度は国際司法裁判所、旧ユーゴ戦犯法廷(ICTY)、および国際刑事裁判所に関する予備的な研究も開始した。この準備を基に2010年3月にはハーグに赴き、実際に裁判を傍聴した他、関係者からの聞き取り調査を行った。また現段階では日本では入手できない資料も入手するに至った。このように本研究プロジェクトは順調に推移している。
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