本プロジェクトは国際紛争解決制度について理論研究を行うと共に、その検証に必要なデータを収集・整理することを目的としている。平成22年度は本プロジェクトの最終年度であるため、プロジェクトの取りまとめ作業が中心となったが、国際司法裁判所の係争データの収集・整理、およびそれに基づく報告も行った。国際海洋裁判所(ITLOS)についても予備的考察および現地調査を計画していたが、時間的に余裕がなく計画のこの部分については断念し、今後への課題とした。成果については、2011年2月4日、東京大学にて研究会を開き研究報告会を開催した他、研究代表者・研究分担者両名とも、2011年3月に、カナダのモントリオールで開催されたInternational Studies Association (ISA)で学会報告を行い、高い評価を得ることができた。国際司法裁判所については遵守に関するデータを中心に収集し、データ分析により、遵守について、パワーや同盟関係など実態的説明変数に比べ、予備的抗弁の有無など手続き的な変数の方が統計的に有意な効果があることが判明した。このような手続き的変数はアクターの選好を反映しているためであるとみられる。また理論を担当した研究分担者は、制度について行動の規則性を重視するグライフの定義を適用し、因果関係に関する内在化された信条と他者の行動予測に関する信条の2つに大別されることとし、日本の外交政策への適用を行った。この手法により日本の国際紛争における行動原理も、より明確になると思われる
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