これまでの年度においては、当該テーマに関する内外の研究状況、関連文献の調査と併行して、イギリス、オーストラリア、シンガポール、それに日本外務省の外交史料館など各国の公文書館等において、史料収集を行ってきた。 これらの分析を進めた結果として、1970年代東アジアにおける国際環境の変化と日本の対応について、単なる二国間関係の集積にとどまらない地域秩序としての変容を相当程度、把握できつつあると考えている。 たとえば、1970年代に米英が相次いで東南アジアから撤退するという戦後アジアにおける地域秩序の一大変動に際して、日本は経済的にはこの地域にすでに深く関与していたものの、安全保障面における関心はきわめて希薄であった。これは同時期における朝鮮半島など北東アジアに対する日本の関心が、安全保障面に特化する傾向にあるのとは対照的である。一口に日本の対アジア政策というが、その内実は多様である。本研究では、アジアを「北東アジア」「東南アジア」「南アジア」という「三つのアジア」に分けて捉えることで、戦後日本がアジアをどのように把握し、関与を試みたのかを、より立体的に捉えることができると考えているところである。 本年度は、上記のような分析と併行して、学会報告や論文等を通した成果の具体化にもつとめた。具体的には、日本政治学会の年次大会における共通論題や、全米アジア学会(Association for Asian Studies)の年次大会において成果を発表した。また、これらの内外における学会報告を通して得られたコメント等も加味した上で、本研究の成果を、単著や編著として成果を刊行する準備を進めている。
|