本年度は、EU加盟へのプロセスの最も遅れた地域である西バルカン(旧ユーゴ+アルバニア-スロヴェニア)地域のEUとNATOの交渉プロセスの課題と各国が直面する国内政治、対外政策の実態について研究をすすめてきた。また、EU、NATO双方が、旧ユーゴの諸国にどのような条件を課し、またその実現にむけていかなる対応を行ってきたかについて検討した。その際、とりわけEU加盟の条件となっている南東欧地域における地域協力の推進を各国がいかにすすめてきているかについても重点をおいて研究をすすめることにした。 20年度はセルビアとクロアチアにおいて研究発表を行うと同時に、資料の収集と意見交換をおこなった。ベオグラードでの国際政治経済研究所では、「セルビアのバルカン外交」のテーマで報告し、かつて非同盟外交を展開し、国際秩序の民主化と地域の安定化につとめてきた旧ユーゴ外交がその中核共和国であったセルビアでどのように継承されているのか、あるいはまったく別の論理で今日の外交がいとなまれているのかについて検証した。また、ベオグラードの政治学研究所においてもジューリッチ所長はじめスタッフとコソヴォ承認問題をかかえる南東欧の地域協力の可能性にいついて議論した。 また、クロアチアのザグレブにある国際関係研究所では、「NATOとEUの間に立つクロアチア」とのテーマで、ふたつの国際組織への加盟選択について対外政策と国内政治がかかえるジレンマについて検討し意見交換をおこなった。
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