21年度の研究概要は以下の通りであった。 (1)21年にクロアチアとともにNATOに加盟したアルバニアの近年の南東欧地域協力の過程を調査するために、11月にアルバニアのチラナの国際問題研究所を訪問し、研究スタッフと討論するとともに、資料の収集を行った。日本では関連資料の入手が困難なため、貴重な機会となった。旧ユーゴスラヴィアとの関連では、コソヴォの2008年2月の独立宣言以来、緊張関係がもたらされたが、アルバニア、セルビアともに地域秩序の安定と協力関係を優先さえる外交に重点をおき、南東欧の地域協力の一層の発展がはかられた。南東欧のコソヴォ独立への承認の対応は分かれているところであるが、最後に残された形の西バルカンのEUへの拡大とも関連し、地域外交の促進と安定が定着したいえるのではないだろうか。 (2)次に南東欧の地域外交に関連して、9月にはセルビアの国際政治経済研究所で二つの国際会議で報告を行った。ひとつは、「セルビアと日本:隣国との関係と境界線問題」であり、もう一つは「今日の地政学的環境におけるセルビア」という国際会議であった。報告のタイトルは、いずれも「隣国外交の比較研究:セルビアと日本」であり、冷戦後の国際政治のなかでの地域協力の重要性と、とりわけ紛争後のバルカン地域におけるセルビアの隣国外交の位置づけを論じ、さらに、日本の東アジアでの地域協力と隣国外交への示唆を得ようとするものであった。 21年度は、以上の二つの点を中心に研究をすすめたのであるが、その過程で冷戦後20年、ユーゴ紛争後10年のなかでの南東欧の地域協力のあらたな進展とその課題を現地の研究者との議論を通じて深めることができたと考えている。
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