平成21年度はまず昨年度、現地公文書館での当初の史料収集を終えた1958年末から61年末にかけてのOEEC改革論議への英米両国政府の関与を分析する活動を、研究代表者と研究分担者がおこなった。21年度9月上記の分析作業の中間的成果に基づき、研究代表者は、イタリア、フィレンツェ在欧州連合歴史資料館(Historical Archives of the EU Institute)に赴き、同資料館収蔵のOEEC事務局文書を閲覧の上必要文書をデジタルカメラ撮影により収集し、大陸ヨーロッパ諸国側のOEEC再編問題への対応についての分析の素材を得た。研究代表者、研究分担者ともに、上記ファイル群の収集後、平成21年度後半にかけて、収集史料の本格的分析作業を行った研究代表者は、主にアメリカ政府文書とOEEC事務局文書の整理分析作業をおこない、研究分担者はイギリス政府文書の整理分析作業をおこなった。上記作業によりOEEC事務局内部でのOEECの新たな役割をめぐる議論はアメリカによる再編提案以前より進行しており、米英を中心とする関係国に加え、事務局内部からの関係諸国、特にイギリスへの働きかけがOEEC再編過程において重要な役割を果たしたものであるとの中間的分析結果が得られた。この結果に基づき再度収集済みの英米両国政府文書の分析を再検討し、OEECという10年間にわたり存続してきた組織独自の論理がいかにして西側同盟内部の経済的協力関係の再編というプロセスに影響を及ぼしたのかを検討することの重要性が確認された。
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