本年度は計画通り、7月にオーストラリア・ニュージーランド・アメリカ学会(Australia and New Zealand American Studies Association)において、発表を行なった。オーストラリアには国際的にも著名なアメリカ研究者が何名かいるが、発表したセッションにもその代表格でアメリカ史をトランスナショナルな見地から研究しているイアン・ティレル教授(ニューサウスウェールズ大学)が出席しており、貴重なコメントを頂戴することができた。 また、夏季休暇中は竹内俊隆編『日米同盟論---東アジアに位置する日本の行方』(ミネルヴァ書房、2011年9月刊行予定)所収の「知的交流に見る戦前・戦後初期日米関係の断絶と継続」と題する論文を執筆した。本稿は、ビアードをはじめとするアメリカの知識人と日本の知米派知識人との交流を考察している。 春季休暇中には、東京大学大学院総合文化研究科附属アメリカ太平洋地域研究センター図書室の高木八尺文庫に収められたビアードの書簡等を閲読・筆写する予定であったが、東北関東大震災のため先方から出張の延期を求められたこともあり、残念ながら果たせなかった。しかしながら、国内旅費を図書購入に充てられた面もあり、来年度以降、より広い見地から当該研究を進めていくことが可能になった。 年度末になり以前、在外研究でお世話になったエドワード・P・クレイポル氏(ウィリアム・アンド・メアリー大学名誉教授)からビアードや彼をめぐる他のアメリカ史家の書簡のコピーの提供の申し出があったのも、最終年度に向けて心強い。
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