本年度は最終年度であったが、ワイオミング大学(ワイオミング州ララミー)の文書館ナショナル・ヘリテージ・センターを訪問して、晩年のチャールズ・A・ビアードの孤立主義を考察する上できわめて重要なビアードの書簡や彼宛の書簡を閲読・複写することができた。 研究成果としては、「知的交流に見る戦前・戦後初期日米関係の断絶と継続」竹内俊隆編『日米同盟論---歴史・機能・周辺諸国の視点』(ミネルヴァ書房、2011年)所収を発表した。同論文では戦前から戦後にかけてのビアードと鶴見祐輔、高木八尺、松本重治ら知米派知識人との交流に焦点を当てて、日米関係を論じた。さらに、戦争をはさみながらも継続したビアード夫妻と日本のアメリカ研究の祖・高木八尺との知的交流を、"Beyond War : The Relationship between Takagi Yasaka and Charles and Mary Beard"と題した英文論文として執筆し、現在、学会誌への投稿に向けて、原稿の完成間近である。これらは上記の史料収集の成果でもある。 また、国内では東京大学大学院総合文化研究科附属アメリカ太平洋地域研究センター図書室の高木八尺文庫に収められているビアード関連の書簡等で、閲読の上、カードに転記(同文庫の史料の多くは複写が禁じられている)できていなかったもの、再確認を要するものを閲読・転記した。 全体として、実質的に2本の研究論文を執筆できたことには、大きな意義があったと自負している。
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