本研究の当初の目的は、ポスト京都議定書交渉に参加しているステークホルダーへのインタビューや交渉文書を通じて、気候変動問題における地球環境ガバナンスの国際制度設計にあたってどのような政治力学が働いたかを探ることにあった。研究計画を作成した当初は、2009年に開催された国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP15)でポスト京都議定書がまとまるか、あるいはポスト京都議定書に向けた一定程度の方向性が示されると目されていたが、実際には合意が成立せず、交渉は継続することとなった。ポスト京都議定書という国際制度が合意されることが研究目的の前提であったため、当初の研究目的を修正し、ポスト京都議定書が合意されない状況下で、地球環境ガバナンスシステムとしての炭素市場がどのように機能し、ポスト京都議定書交渉にどのように影響を与えたのか、その政治的、経済的な力学を探ることに主な焦点を当てて分析した。 平成22年度は、2010年12月に開催された国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)に参加し、議定書交渉文書を収集すると共に、交渉参加者への聞き取りを中心とした情報収集を行った。ポスト京都議定書を作成しているまさにその現場で直接聞き取り調査を行ったため、地球環境政策研究という課題指向型研究を実証主義的に行い、学術的及び社会的にも貢献することをめざす、という本研究の目的に照らしても、非常に大きな意義があったと考えられる。また、資料収集と並行して、気候変動問題における地球環境ガバナンスシステムとしての炭素市場の一翼を担っているクリーン開発メカニズムの役割を検討し、その成果を論文にまとめた。
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