本年度は、ディアスポラ国際政治の世界動向について理論研究を進めるとともに、アルメニア(ナゴルノカラバフ)及びカナダを訪問して、アルメニア人ディアスポラ、及び日系社会ディアスポラについて資料を収集した。まずディアスポラ世界動向については、これまでの研究成果をもとに、拙著『民族自決の果てに』(有信堂高文社、2009年4月刊行)を著したが、本書の随所において、ディアスポラ・ネットワークの起源と展開を論じると共に、特に第9章において冷戦後国際社会におけるディアスポラの活性化、そのトランスナショナルネットワーク化の法的根拠およびその動態について論じた。 ついで本年度は、特にアルメニアのディアスポラの動向に関する資料収集に当たったが、その理由は、ナゴルノカラバフ紛争、及びその後のナゴルノカラバフの平和構築においてアルメニア人ディアスポラがどの程度、貢献しているかを探るためである。アルメニア、それにナゴルノカラバフに足を運び、現地調査を行ったが、アメリカ、カナダ、モスクワにおけるアルメニア人ネットワークの規模の大きさ、貢献度の大きさを発見した。次年度は、アルメニアを含めコーカサスの紛争のエスニック(ディアスポラ)ネットワークについてさらに調査を進めていく。
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