本研究の主目的は、20世紀後半に顕在化した地球規模課題の解決に向けて多様な主体が時に対峙し、時に協働しながら新しい規範形成に関わる実態の解明にある。特に、トランスナショナルな市民社会(TCS)が金融機関の社会的責任投資(SRI)に及ぼす影響を考察することを通じ、新たな規範形成にどのような変化が生じるのかを検証することにある。平成21年度における研究内容は、以下の通りである。 (1) TCSのネットワーク化の実態調査:TCSがクラスター爆弾という非人道的兵器の禁止に向けて、金融機関の行動規範に及ぼす影響について実態調査した。取り分け、ネットワーク内部の情報や経験の伝達・共有がグローバルレベルにおける市民社会の連携が、金融機関への働きかけにどういった影響をもたらすのか検証した。 (2) フィールドワークの実施:TCSと協働する他主体、特に金融機関や政府関係者への聞き取り調査を中心に、フィールドワークを行った。それは、クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)の批准過程において、国内担保法によって金融機関の行動を拘束する条項を盛り込んでいる国々があることから、その内容や成立過程にTCSがどのように関与したのかを検証することが慣用だと判断した為である。 (3) 成果の整理と発表:上記の実態調査及びフィールドワークの成果を踏まえ、本年度の研究成果を国際安全保障学会誌『国際安全保障』に論文としてまとめた他、一般読者を想定した書籍として出版した。また、研究会においても複数回報告を行った。
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