平成21年度においては、1970年代以降の日本外交上の重要事項をアジア太平洋地域におけるグローバル化、「新冷戦」などの動きに照らして再検討することを試みた。代表者佐藤は、未刊行共著において福田ドクトリン、環太平洋連帯構想、対中円借款供与、東南アジア諸国への経済援助、APEC創設などの事例において、日本がソ連の影響力の封じ込め、アメリカのプレゼンスの維持、中国を経済的に西側に取り込むことなどの地域構想を基礎に外交を展開したことを明らかにした。 分担者池田は、戦後自民党政権の政策体系を分析し、自民党内の動向に着目してアジア政策を解明するとともに、沖縄内部の政治情勢から沖縄問題を考察した。さらに日韓会談の分析を通じて、韓国側と日本側の資料公開状況の違いを把握した。 分担者高橋は、外交文書の形成手順に着目し、戦後日本外交の構想段階における主管課の重要性と現段階での分析可能性を指摘した一方、その後の省内、他省庁間との議論、最終的な政策決定段階における資料的限界を示し、今後の資料公開システムの方向性を検討した。 この過程で、1970年代以降の東アジア地域への日本外交を分析する場合には、自民党内の政策形成過程を明らかとする努力が必要なこと、さらに大蔵省、通産省の政策構想の解明と政府内、閣議における議論を知ることが不可欠ながら、この面での日本の資料公開が全く進んでいないことが判明した。そこで、政府資料の一層の公開促進を試みた。
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