1) 不確実性下での「消費分散選好」の公理的分析を行い、研究成果を学術雑誌「Theoretical Economics」に投稿した。また、修正後再投稿するように、との要請を受けた。 先行研究では確率空間において時間の経過を伴う消費の問題を考えた時、「損失回避性」をリスクに対する性質として扱っている。これに対し、本研究では「消費分散選好」(効用の高い消費と低い消費を繰り返す傾向)を用いることにより「損失回避性」を異時点間の消費に関する性質として捉えなおすことに成功した。この結果は、先行研究とは逆に、異時点間の消費を考慮した後に将来の消費が直面するリスクを考慮するように公理体系を用いて定式化できたことに起因している。従って、この「時間とリスクの評価に関する新しい定式化」は意思決定論の分野における重要な理論的貢献だと考える。また、「消費分散選好」のもとでは、消費が向上していく局面は「利得」、消費が下降していく局面では「損失」として捉えられるので、「損得」の定義がモデルの中で内生的に決定される。このため、従来恣意的に定義されていた「利得」と「損失」という概念を明確な関数表記により定義できた意義は大きいと考える。 2) 非「単調増加性」を「消費分散選好」と整合的な形で公理化する研究を開始し、現時点での研究成果をセミナーで発表した。詳しい研究は平成21年度に行う予定である。
|