研究課題/領域番号 |
20530147
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大瀬戸 真次 東北大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (00278475)
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キーワード | メカニズム・デザイン / 相互評価 |
研究概要 |
平成23年度は、相互評価に関するメカニズム・デザインについて研究を実施した。 相互評価メカニズムは、例えば大学を評価する際に重要である。すなわち、各大学から代表者が集まり、代表者が各大学の評価を行い、相互評価メカニズムによってそれらの評価を集計して、大学の評価あるいは順位付けを行うのである。また、相互評価メカニズムは、大学の研究者などの専門家の評価、あるいはフィギュアスケートやシンクロナイズド・スイミングのような芸術的スポーツの評価にも応用できる。ここで問題となるのは、各大学の代表者が客観的な評価をせず、自分の所属する大学が有利になるように自分の大学に高い評価を与える可能性があることである。そこで、各大学の代表者は、自分の大学の評価はせず、自分の大学以外の大学の評価を行い、それを適切に集計するメカニズムについて議論を行う。 ング・スン(2003)は、各大学の代表者が他大学の評価を得点形式で表明する場合、全員一致の原則・匿名性・単調性を満たすメカニズムが存在しないことを証明した。平成23年度の研究では、ング・スンのモデルにおいて、得点の付け方(ドメインの条件)がある程度限定されたとしても、全員一致の原則と単調性を満たすメカニズムが存在しないことを証明した。この結果は、ング・スン(2003)の結果からドメインの条件を緩和し、さらに匿名性の条件を要求しないという点で優れている。また、ドメインの条件を極めて限定した場合には、単純加算メカニズムが全員一致の原則と単調性を満たすことを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ング・スン(2003)の不可能性定理を再検討し、より精緻化された結論を導くことが研究の目的であったが、「ドメインの条件」と「匿名性の公理」という2つの観点から再検討を行い、いくつかの重要な結果を導くことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
経済環境におけるメカニズム・デザインについて引き続き研究を実施する。特に、個別の経済環境において、戦略的操作という観点からメカニズムの設計の可能性と限界について考察する。具体的には、非分割財の配分問題、排除可能な公共財の供給と費用配分、大学やスポーツにおける相互評価の問題を取り扱う。
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