研究課題
平成20年度は自由時間の配分に関する不平等基準として労働搾取概念を位置づけ、その適切な指標化の為の公理的分析を行った。労働搾取概念は、これまでは古典派経済学における労働価値説に基礎付けられたものであり、市場の価値理論の論脈で語られてきたが、この概念の本来の意図は、人間の自由な自己発展の為の不可欠な基本財である自由時間へのアクセスの不均等について言及することである。この本来の趣旨に沿った形で搾取概念の再定式化を行うのがこの研究の目的であり、尤もらしい定式である為の必要条件を幾つかの公理として提示した。その公理とは、数理経済学の分野での労働搾取理論において、置塩信雄や森嶋通夫などの研究成果を含め、これまで提示されてきた搾取の様々な定式が満たすような極めて弱い幾つかの要請の他、搾取概念を人々の社会関係として定義する為の条件を定式化したものを含む。それらの公理は理論的には尤もらしいのみならず、十分に弱い要請であるが、結果的に課した全ての公理を満たす搾取の定式は1つのみである事を、定理として証明した。このたった一つの搾取の定式は、いわゆる古典派経済学の労働価値説に立脚する概念の定式とは解釈できず、非厚生主義的な分配的正義論として搾取理論を再構成する可能性を示唆するものとして意義付けられる。今後、この定式に基づいた搾取概念を用いて、市場経済システムにおける人々の福祉状態に関する新たな観点からの評価が可能となって行く事が期待される。
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