研究概要 |
自由時間へのアクセスの機会の不公正に関する指標として、労働搾取概念を定義し、それの適切な定式に関する公理的分析の研究を、ディスカッション・ペーパー『Exploitation as the Unequal Exchange of Labour : An Axiomatic Approach』として完成させた。その成果を、Far Eastern and South Asian Meeting of Econometric Societyにて報告した他、関連する国内外の研究者に論文を送り、多くの好意的なコメントを得た。論文の内容は、労働搾取の定式に関する定義域の公理、搾取のない効率的配分に関する分権的執行可能性に関する公理、初期賦存状態に関する独立性公理、及び、搾取の関係的特性についての公理、以上の4つを提起した。そのうち、最初の3つの公理は数学的には十分に弱い条件であり、従来の労働搾取理論において提起されてきた搾取の定式の全てがこれらの条件を満たすものである。他方、搾取の関係的特性についての公理は、搾取者が存在する事と被搾取者が存在する事とは互いに必要十分である事を要請するという、極めて自然な要請である。しかし驚くべき事に、先の3つの公理に追加して、この最後の公理を要請するや否や、それら4つを全て満たす搾取の定式は唯一、Dunkan Foley(1982)の提唱した定式のみである事を、明らかにした。さらに、この定式の下では、数理的搾取理論に関する従来の主要定理が全て、極めて一般的な経済モデルの下で成立する事が確認された。その他、労働搾取理論の関連する諸論文を派生的に書き、それらをJournal of Economic Behavior and Organization, Bulletin of Political Economy, Metroeconomica等の査読つき国際誌に投稿し、アクセプトされた。
|