研究概要 |
金融危機は自己実現的性質をもつので,コーディネーション・ゲームとして分析することができる.コーディネーション・ゲームにおける複数均衡の問題に対処する方法としては,グローバル・ゲームを用いることが一般的である. 本年度は,新しいクラスのグローバル・ゲームとして「不確実性下のグローバル・ゲーム」を導入した.このグローバル・ゲームでは,プレイヤーはmaxmin期待効用に基づいて意思決定を行う.そして,プレイヤーは不完備情報下の戦略的環境において,リスクと不確実性の両方に直面するので,こうした情報構造がプレイヤーの行動にどのような影響を与えるかを分析することができる. 本年度の研究では,「不確実性下のグローバル・ゲーム」が一意な均衡を持つことを示した上で,その分析手法を提案した.プレイヤーがmaxmin期待効用をもつ場合、一般に不完備情報ゲームの分析は複雑になる.しかし、「不確実性下のグローバル・ゲームの場合は,戦略的補完性のような単調構造が維持されているので,通常のグローバル・ゲームとほほ同様の手続きで,分析を行うことができる. その応用として,通貨危機と信用危機の二種類の金融危機を分析し,異なるタイプの金融危機において,リスクと不確実性がそれぞれ異なる役割を持ち得ることを示した.さらに政策的含意として,信用危機を防ぐためには,不確実性を減らすことによる情報の透明性向上が重要であることを明らかにした.
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