研究概要 |
前年度の研究成果である「不確実性下のグローバル・ゲーム」の経済実験を行い,理論予測と整合的な実験結果を得た. 不確実性下のグローバル・ゲームとは,プレイヤーがmaxmin期待効用に基づいて意思決定を行うグローバル・ゲームである.プレイヤーは不完備情報下の戦略的環境において,リスクと不確実性の両方に直面するので,こうした情報構造がプレイヤーの行動にどのような影響を与えるかを分析することができる.前年度の研究では,一意な均衡が存在する十分条件を導出じた上で,不確実性とリスクがプレイヤーの行動に異なる影響を及ぼすことを示した.とくに,定数の利得を与える行動を安全行動と呼ぶことにすると,不確実性の大きい状況では,プレイヤーが安全行動をとる確率が高くなることを示した.本年度は,この理論の実証を経済実験で試みた. 実験で前提としたモデルは,信用危機のモデルである.債権担保価値が一定以上の場合,不確実性の高い(確率が分からない)情報に対しては,信用危機の確率が増えるが,リスクの高い(分散が大きい)情報に対しては,信用危機の確率が減る.本年度の研究では,均衡における信用危機の確率を数値として計算し,同じ環境をコンピューターを用いた経済実験で再現し,理論値と実験結果を比較した.その結果,確率の値そのものは,理論と実験に乖離があるもの,情報と信用危機確率の関係については,理論と整合的な結果を得ることができた.
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