研究概要 |
平成21年度前半は,本研究では第2段階にあたる,平成20年度に構築した理論モデルをさらに発展させて,貸出債権の証券化を考慮したモデルに拡張した。その結果、どのような変数に依存して、不良債権の処理が効率的に行われる均衡になるか、あるいは、不良債権の処理を先延ばしにするような非効率的な均衡になるかが,明らかになった。具体的には、それらの変数とは、潜在的なキャッシュフローの獲得額、資産の清算価値、および、各プロジェクトの成功確率である。また、この理論的結果の経済厚生的な意味も検討し、不良債権の処理を円滑に進める制度的な仕組みも検討できおるような方向へ、モデルを発展させた。平成21年度後半は、メイン寄せの理論モデルの実証データによる検証が可能かどうかを検討し、実証研究のためのデータの整備に努めた。また、簡単な推計も行って、理論的予測がどの程度当てはまりそうかも、調べた。その結果、データを取ることができる期間において、メイン寄せが起きているということが明らかにされた。ただし、経済研究所にあるデータが、いまだ不十分なため、いくつかの重要な変数の効果は年度によってはきれいな形で理論通りの推計結果が得られたが、他の年度では、あまり強い形では推定することができなかった。そのため、完全な形の推計は、最終年度で行うことにした。さらに、静学的な契約モデルから,連続時間の動学的なモデルに拡張のために、連続時間の契約モデルに関する文献を渉猟し、連続時間契約モデルの構築に努めた。
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