研究課題
本年度は、主として家計の異質性を考慮したマクロ動学分析を研究対象にし、世代重複経済と無限視野経済の両方に関して、基礎的なモデル分析を行った。世代重複経済においては異なる世代の共存という意味で家計の異質性が本来備わっているが、本年度の研究では、消費の世代間の外部性を考慮することにより、家計の異質性の存在がもたらす問題をより鮮明にできる設定のもとで検討を行った。その結果、世代間にわたる消費の外部的な相互依存関係の存在のために、外部性が存在しない標準的なモデルとはかなり異なる結果が成立することを確認した。特に、財政政策と金融政策が長期的な資本蓄積に与える効果が、消費の世代間の外部性の有無によって、大きく異なる可能性があることを示した。一方、無限視野経済の場合については、まず異なる初期資産をもつ複数の家計が存在する経済において、累進課税が果たす役割を分析した。その結果、累進課税は所得の均等化をもたらすと同時に、経済を不安定にする均衡の不決定性を生み出し得ることを確認した。またこの経済にさらに消費の外部性を導入すると、家計の異質性を考慮しないときには生まれない効果(消費の外部性が定常状態の資産分配に影響したり、均衡の不決定性を発生させるなどの効果)が生じることを確認した。なお、世代重複経済の分析については2008年度の発表論文で、無限視野経済については、学会報告とワーキング・ペーパーのかたちで公表している。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)
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