研究概要 |
1. 異質な家計が存在する新古典派成長モデルを用いて、家計間の消費の外部性が経済全体の資本蓄積と家計間の資産分配に対してどのような効果を持つかを分析した。消費の外部効果をマクロ的に検討する場合、既存研究の多くは代表的家計モデルを用いてきた。代表的家計経済では、消費の外部性は主として量的な効果しか及ぼさない。しかし異質な家計が存在する場合は、主体間の外部効果の非対称性を仮定できるため、モデルの動学的性質が質的にも変化する。異質家計モデルでは、代表的家計モデルでは生じない均衡の不決定性や不安定性が発生する可能性があり、また長期均衡における家計間の資産分布についても、消費の外部性の程度が影響を及ぼす。本年度の研究では、異質家計を含む標準的な新古典派モデルにおいて個人間で異なる程度の消費の外部効果が存在することを仮定したうえで、モデルの動学的性質と長期均衡の特徴付けを精密に分析した。 2. 動学的な2国開放経済モデルを用いて、国際間の非対称性(異質性)がもたらす理論的な帰結について、いくつかの代替的な仮定のもとで検討した。伝統的な貿易理論における2国動学モデル(ヘクシャー・オーリン・モデル)では、2国の選好と技術は同一であり資本の保有量のみが両国で異なると仮定されている。この場合、いくつかの付加的な仮定のもとで要素価格は両国で均等化し、世界経済は1国の閉鎖経済モデルと同様のふるまいをする。しかし、両国の選好、技術、政策等が異なる場合、あるいは非貿易財が存在する場合は世界経済の動きは閉鎖経済とは異なる。本年度の研究では、国際間の異質性が存在するときに、貿易構造の差が動学的および長期的にどのような効果をもつかを分析し、伝統的な理論モデルとはかなり異なる結果が得られることを確認した。 上記の1,2のテーマについては、英文の論文をそれぞれ作成し、学会・セミナー等で報告をした後、現在いずれも査読誌に投稿・審査中である。
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