研究計画書の中では、4つの具体的な研究目的を設定しており、平成20年度では以下の2点について主に研究した。 (1)「規模の効果」を留意し、生産性が異なる企業が存在する貿易・成長モデルを構築し、 (2)企業の生産性の分布を内生化する。 この2つの点を検討したのが"Trade and Firm Heterogeneity in a Quality-Ladder Model of Growth"の論文である。今年度は、この研究結果を再検討し、更に拡張することに力を注いだ。その結果、貿易自由化による社会厚生の変化について非常に興味深い結果が得られた。上記の論文では、貿易自由化後の社会厚生は上昇・減少するとし、単調的に上昇する条件を提示している。しかし、ジャーナル投稿や他の研究者とのディスカッションで、この部分は更に改善できることが判明し、今年度の研究により"Trade and Firm Heterogeneity in a Schumpeterian Model of Growth"の論文に発展した。この研究は、神戸大学経済経営研究所のZhao先生と勧めているが、本プロジェクトを通じて、貿易と環境の別の分野の研究へも繋がっている。また、今年度では、本研究プロジェクトの3つ目の研究目的(企業の生産性の事前分布の違いにより、要素賦存に基づく比較優位が内生的に発生する新しい成長・貿易理論モデルを構築する)の検討を始めた。
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