【内容】申請書で描写した共同プロジェクトの動学不完備情報ゲームを分析した結果、片側不確実のケース(評価額の不確実性が一方のプレーヤーにのみ存在するケース)について、期待していた以上の理論的成果を上げることができた。一般的なパラメータ(プロジェクトの費用、時間選好、評価額、評価額の事前分布)について完全ベイズ均衡を特徴付けすることができたし、均衡が一意であることも証明できた。 均衡における最終資源配分が社会的に効率的になる条件も導出した。また、プロジェクト完成に必要な時間についても数値計算プログラムを使って調べた。その結果、完成時間はプロジェクトの費用と非単調的な関係にあることが判明した。コストが高いプロジェクトの方がかえって完成時間が短い場合がある。また、プレーヤーが動く頻度(例えば、モデル上の一期間が一日なのか一週間なのか)が平均完成時間に非単調な影響を持つことも分かった。一期間の長さを短くすることが必ずしも完成時間を短縮するわけではないのである。 【意義・重要性】すべてのパラメータについて均衡が実際に計算できるメリットは大きい。パラメータの数が比較的少ないモデルなので、数値計算分析をする上でも、自由度が多すぎて困るということがない。平均完成時間などが具体的に計算できるので、定性的な結果にとどまらず、定量的な結果を出すことができる。例えば、完成に長時間かかるということを定性的に表現するには何らかの極限を考えるのが普通だが、極限をとる過程で現実から遠ざかってしまう。一方、定量的な分析では現実的な時間選好率を使うことによって、何週間かかるのか、何ヶ月かかるのかということが具体的に分かるので、理論の含意がストレートに分かる。
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