研究概要 |
協調ゲームを代表とする複数均衡を持つゲームにおいて,どの均衡が最も実現しやすいと考えられるのか?均衡選択問題とよばれるこの問題に対する有力な接近法として確率進化分析がある.従来の確率進化分析のほとんどは,2人・対称ゲームを考察の対象としてきた.これは,同一の利得構造を持つ同質的プレイヤーからなるゲームのみに考察が限定されてきたことを意味する.本研究は,多人数・非対称ゲームを対象とした確率進化分析を展開することによりこの制約を乗り越え,異質かつ多様なプレイヤーからなるゲームにおける均衡選択問題の解明を試みるとともに,得られた結果の集合的決定問題や協力行動の達成問題への応用を図る. 平成20年度の実績は次のとおりである. Maruta, Toshimasa and Akira Okada(2009) "Stochastically stable equilibria in coordination games with multiple populations," Graduate School of Economics Discussion Paper No. 2009-1, January, Hitotsubashi University. この論文は,多人数協調ゲームにおける確率進化分析について,単一集団モデルにおける均衡選択と,複数集団モデルにおける均衡選択との間の質的差異についての研究成果である.本論考の意義は,多人数非対称協調ゲームにおける確率安定均衡の一般的十分条件をはじめて示したことにある. そのほか,論文として形をなすまでには至らなかったが,確率進化分析の応用として異質な個人からなる社会における協力行動の達成の問題を考察した.とりまとめは,21年度以降の課題となる.
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