本年度は、本研究の完成年度として、さまざまなテーマでの眼球運動測定器の研究を進めた。特に、社会的選好に関する研究は論文を完成し、現在、査読つき国際学術雑誌に投稿中である。この研究においては、人々の社会的選好に関する選択行動と、眼球運動による情報獲得行動はかなりの整合性を持つことを発見することができた。この成果は、フランス、モンペリエ大学経済実験研究所、信州大学経済学部をはじめ、内外の様々な研究会、セミナーで報告を行った。完成論文はそれらのセミナーでいただいたコメントをもとに修正したものである。 そのほか、世論調査における世論調査票に設計に関する研究も進めている。また、帰納的ゲーム理論における人々の情報獲得行動とその利用に関する研究も始めている。これらの新たな研究についても、2012年度中に研究成果をまとめる予定である。 眼球測定器による研究では、従来の実験研究と異なり、被験者の情報獲得行動が明白になり、その分析が可能となる。また、fMRIほど高価な機器を使う必要がなく、また、明確な数値データを獲得できるので職人的な分析能力を必要としない。しかしながら、眼球運動の数値データは膨大であり、その分析方法の確立には困難を極めた。そのような困難を克服して、熟練した技術がなくても通常の統計、計量分析手法によりデータを分析する方法を提示することができたことは、この研究の大きな成果と言える。今後、さまざまな分野での応用への端緒を開いたということができる。
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