研究概要 |
本年度は,"Level-k Analysis of Experimental Centipede Games"の改訂版を学会IAREP/SABE/ICABEEPで発表し,再投稿した.部分ゲーム完全均衡の予測に反することで有名なムカデゲームの実験結果に対して,合理性に階層性を定義したうえで,比較的低い合理性の度合いを持つ人々が分布していると考えるモデル(Level-kモデル)と,その他のモデルとの説明力の比較を行った結果,Level-kモデルが他のモデルより優れていることがわかった,また,川越・ホルム論文"Face-to-Face Lying-An experimental study in Sweden and Japan"がJournal of Economic Psychology誌に掲載された.この論文では,利害対立のあるコミュニケーションにおいて,送り手が嘘をつく可能性があるにもかかわらず,送り手のメッセージを受け手が信じる傾向性を示す「真実バイアス」について実験室実験によって検証した.既存の研究が抽象的なゲームであったのに対し,対面でカードを使用することで,より利害対立が先鋭化する状況を設定したが,真実バイアスが見られることがわかった.さらに昨年度末の実験結果を論文にし,"Guilt Aversion Revisited : An Experimental Test of a New Model"として学会で報告した.事前の約束を果たさないことで相手の期待を裏切ることにより罪意識が生じるという罪回避の理論については,その妥当性について賛否両論が存在した,この研究は,従来の罪回避の理論を精緻化した上で,事前コミュニケーションのある信頼ゲームを用いて罪意識の存在を確認する実験を行った,信頼ゲームにおいて被験者の間で協調が見られる傾向があったものの,被験者の2階の信念はそれと相関しておらず,罪回避の理論は棄却された.
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